おじいさんの味

わたしがうまれたとき、おじいさんはもうこの世にいませんでした。
そのせいか、物心ついた頃からわたしにはおじいさんへのつよい憧れがあり、街で長身痩躯のダンディなおじいさんを見かけては「わたしのおじいさんだったらいいのに」と、おじいさんとのあんなこんなを夢想したものでした。
友人の家族と食事をしたとき、その場の最高権力者であるおじいさんが店員を顎で使ってファミリーレストランのテーブルをくっつけたり動かしたりのワンマンプレイのあと、いざ注文する段になって「桃太郎侍がはじまる」と言いだし何も食べずに帰宅するはめになったのにはちょっとウンザリしたものの、帰った家で孫とじゃれあう姿を見るとまた、「わたしのおじいさんだったら」と思ってしまうのでした。