最近読んだ本 一〇〇一話をつくった人

星新一 一〇〇一話をつくった人

星新一 一〇〇一話をつくった人

以前も書いたように、小学生のころは友達と毎週日曜電車に乗って教会にゆき、そのかえりはなんばで遊ぶことになっていました(こっちがメイン)。

とはいってもお金もないので、たいていは本屋さんで立ち読みしたり、マクドナルドでしゃべったり、ただなんばから心斎橋まで歩いて、また帰ってきたりとかそんなもんでしたが、そのなかのコースに大阪球場下の古書街がありました。
いまになって考えると、古本屋で、買うわけでもなくただ立ち読みをする小学生女子ってのもけっこう迷惑だったのかもしれません。が、古い雑誌とか映画のパンフレットを見るのは楽しいものでした。友達はそのころ、宝塚〜仏像と確実にステップを上がっていきつつあったのでもっぱらそういう本を中心に見ていましたが、私はとくにポイントもなく目についたものを読んでいました。
そんなふうだから、読んだ雑誌になにが書いてあったのかほとんど覚えていませんが、めずらしく覚えているものがあります。それは南海なんば駅に関しての記事で、新駅舎建設からなんば駅ターミナル化への構想、ターミナルビルには高島屋が入り、ゆくゆくは一大商業拠点になる、と述べられている記事*1、その記事を、すでに完成から時間がたったターミナルビルの中で読んでいる自分がいる、というのがとても奇妙な感じでした。そしてその雑誌の裏表紙を見ると、そこには星製薬の広告があり、当時文庫本で星新一を読みはじめたばかりの私には、そんなこともうれしく、印象に残っています。

ということで父・星一について書かれた前半も、時代背景などをあれこれ思い出しながらけっこう楽しく読むことができました。星製薬という名前は知っていても、モルヒネの製造で大きくなった会社であるというのは初耳で、そこからひろがる人脈も、多士済済。彼らとのエピソードだけでいくつも本が書けそうです。
星新一の文章は世の中のしがらみを感じさせないところが魅力で、本人にもそんなイメージをもっていましたが、この人にも過去があり、そこから連続するものがあったんだなぁと、あたりまえだけど、いままで考えてもみなかったことに気づかされました。

あと、いままでショートショート1001話ってのは、星「新一」からのもじりなのかと思ってました(違うようです)。

*1:大正末〜昭和初期でしょうか?