思い出した話


あれは小四の秋に引っ越す前だからたぶん十歳くらいのころ。
近くに住む二歳年上の友達といつものように住吉大社の太鼓橋付近で鳩や馬に餌やったり亀をみたりしてウロウロしていたとき、一人のおばさんに声をかけられた。たしかグレーか茶系のジャケットにスカートのいたって地味な感じの人だった。(イメージとしては学研のおばちゃん)

どういう言葉だったのかはハッキリ憶えていないんだけど、何かの集会に誘われた。終わったらお菓子がもらえるという情報に私たちはとびつき、さして疑いも抱かずついていった。

やがて彼女は粉浜商店街から26号線に抜ける間のゆるい下り坂の途中にある雑居ビルの一室に入っていった。中は十二畳くらいの部屋で、そこには3〜40人の女の子たちがいた。彼女たちは四列ほどの列に並んで正座をしており、その最前列には祭壇のようなものがあった。

私たちは促されてその最後尾に座った。

一人の女性が前にたって話しはじめた。
細かい内容は忘れてしまったのだが、いまからあなたたちにある呪文を教えます。これはあなたを守る力をもっている。絶体絶命のピンチに陥ったときにとなえなさい。しかしこの呪文を人に話したりするとその効力はなくなります。というような内容だった。同時に結ぶ印のようなものも教えられた。それから私たちは印を結び、その言葉をとなえながら額を床にこすりつけるようにいわれた。
そうやって少しずつ前に進み、最後に祭壇の前で同じことをやると列からはなれた。

そうして無事、私たちは「なげわ」をもらって帰ってきた。

今日はり重カレーショップでビーフカツを食べながら話してるとき、急に思い出した。



なによりおどろいたのは自分がその呪文をまだ覚えてるってこと。