安心のファシズム/斉藤貴男

安心のファシズム ASIN:4004308976
ここ数年、テレビや新聞、ネットを見て落ち込むことが多かった。ワールドカップに拉致家族の帰国、数ヶ月前のイラク人質事件。

これまで私は、自分の知らないことについては、断定的に物を言わない、決め付けないようにするというのを自分の姿勢としてきた。
マスメディアが伝えないことのなかにも重要なことがある、それはそうだろう。しかしそのなかにはあきらかな誤りの情報も多く、それがなんの批判も受けずに既成事実として流布されていく状況に危機感を持っていた。反日という言葉、私は日本人でないのでほんとうのところはわからないのかもしれないが、日本人という枠はどこにあるのだろう?一部の解釈では反日の人は、朝鮮半島他の意向を受けて動いているということになっているそうだが、それぞれが抱くあるべき国のすがたが違う以上、その行動や考え方が違ってくるのは当然のことだろう。
それを自分の理解できないもの=他の勢力に加担、あるいはその意向を受けて行動するもの とみなすのは
あまりに怠慢なんじゃないかなぁと思う。

とはいうものの、私にとってこのへんの世間の動きは疑問に思うところが多く、いろいろ想像しては見るものの、結局どうすればよいのかわからなかった。
この本は、こうした流れの背景に、人々の不安があることを指摘している。
監視カメラに抵抗のない人々がそれほど増えているというのは驚きだった。



ただちょっと危惧する点をひとつ。それは、この本を読む動機は現状に対する疑問や不安である場合が多いと思うのだけど、この「安心」したいという気持ちに、一定の説明を得ることで溜飲をさげるだけに終わってしまうのではないかということ。

それではもともこもない、というか、どちらも「安心」を求めてるのだなぁ。それは自然なことかもしれないけど、その行く先もよーく見極めないとね。